関大大学の教員養成GP事業の一環として、2日間に渡って開催されたシンポジウムに参加しました。初日のみの参加でしたが、非常に盛況でした。ぼんやり思ったことなどをメモ書き程度に記しておきます。
<モーニングセッション>
Dr. Barkhuizen(University of Auckland)によって、教員養成におけるstory/narrativeの役割を事例を用いて説明された。
教員養成において、ジャーナルを書かせたり、記録をつけることはよくなされているようであるが、それをどう切り取っていく かという視点の提供と理解した。storyは、時間・場所・個人と社会との関係という3次元があるとし、そこに3つのstory(story/Story /STORYと順に個人度が下がり客観度が上がる)を重ね合わせたものを道具として提案していた。
実際の授業でstoryを書かせたものを分析し、どのような部分のところを書いているかを例示してくれた。
昼休みに先輩たちと食事をしていた時に話があがったが、「こんな風に分析できます」はいいんだけど、「それをどっちへ持って行くのか」や「どうしたいのか」については触れられていなかったことが課題点としてあがるだろう。
教員養成系の大学や大学院では、現職や学生がこうした自分の考えや経験を文字にすることが多くあるとは思う。それを分析する教員や、共有する現職や学生が、どこに向かっているのかをしっかりと考えておかないと文章の集まりにしかならない。その意味では、Dr. Barkhuizen自身の授業では、「何のために」書かせているのか、が知りたくなった。
<基調講演>
Dr. Gu(Victoria University of Wellington)によるstrategy-based instructionの事例研究があった。Language Learner Strategyは有効であるとのことから、それらを小学生に教えたらどうなるか、という実験研究。結果から言えば、教えたらいいよ、ってことだったが。
strategyは、「問題点を把握し、適切な方略を選択、実行した後、その結果を評価し、うまくいかなければ再度挑戦するか保留するかを決める」という一連の「プロセス」であるとした。
プロセスを教えるって難しくない?という第一印象がまずあった。それから、good learnersには、strategyのorchestrationがあるということであったが、それをどう扱うのか、というところは不明のままであった(質疑応答の時にも突かれていた点)。
「strategyを教える」ってやっぱり、「こんなんありますよ」って感じの単品料理を出すという印象がぬぐえないのだ けど…。orchestrationはやっぱり、どういう食い合わせで定食を作り上げると、上手くいくのかってことになるんだろうけど、その辺は難しいの かなぁ。自分の分野とかでも思うことではあるけど、○○指導研究ってのはやっぱり難しいなぁと感じました。
<研究発表>
音声系の発表があり(実はこれが目当ての一つでもあったのだけど)、それを中心に。
intelligibility研究ってことで、ネイティブに音声をディクテーションさせる。文脈ありとなしでやるとありの方が当然高い。で、単語のどういった発音の誤りがintelligibilityスコアを下げるかということを調べたもの。
先行研究でもあがっていたDerwing & Munro(1999)のduplicationと考えてもよい感じ。単語の聞き取りをさせていたので、prosodicの側面が今ひとつ扱えていない (語アクセントの誤りが指摘されてはいたが、prosodicと呼んでよいものかどうかは疑問)。
<Rod Ellisによる講演>
corrective feedbackについてのお話。多くの先行研究から、corrective feedbackに関する課題や問題を提示し、今後考慮すべき社会文化的側面などについても解説、たたき台としてのcorrective feedbackに関してのガイドラインを提示した。それを検証、確認することが大事と念を押しておられた。
SLAとpedagogyを分けて発表内容を組み立てていたのだが、相当に明確にしていたかったようで、何度も出てきた。分けること自体に何の不思議も感じないが、何度も繰り返された点は、少し気になる。
(19.02.2007)