ずいぶん前になりますが,JALT Kobeにて “Pereption of prosodic cues by Japanese EFL learners” と題した共同研究の発表を行いました。
発表時のスライドを以下に置いておきます。よろしければ覧ください。
comfortably intelligible, comfortably intelligent
そうありたいな…ということで。
ずいぶん前になりますが,JALT Kobeにて “Pereption of prosodic cues by Japanese EFL learners” と題した共同研究の発表を行いました。
発表時のスライドを以下に置いておきます。よろしければ覧ください。
応用言語学辞典のエントリーからdiscourse intonationの項目をピックアップ。
Pickering, L. (2013). Suprasegmentals :Discourse intonation. In C. A. Chapelle(Ed.), The encyclopedia of applied linguistics (pp. 5437-5443), West Sussex: Wiley-Blackwell.
“discourse intonation” は現在2つのものを指すことが多い。1)談話の区切れなどを示す機能,2)話者間の情報の共有に基づいたピッチ変化を体系化したDavid Brazilによる談話の機能,の2つ。
Brazilのモデルはイギリスやアジア圏では広まったが,アメリカではそれほど影響力を持たなかった。native varietiesのみならずWorld EnglishesやL2 varietiesにもこのモデルを用いられている。Hallidayのモデルとは異なり,Brazilのモデルでは,イントネーションの選択に語用論的機能を付与するモデルを構築した。このモデルではイントネーションの構成要素が対話における情報・社会的な収束に直接的に貢献し,語用論的意図が共有される。アメリカ英語でのPierrehumbert and Hirschberg(1990)のモデルと同じく,全体としてのイントネーション曲線の形よりもむしろ曲線の特定の構成要素により意味が伝達されるもの,と言ってよい。
tone unit and tonic segment
トーンユニットという発話の区切りの中に,ピッチが大きく変化する卓立(prominent・あるいは強勢音節)がある。卓立は情報構造的には新情報である。
Q: What card did you play?
R1: //the KING of SPADES// (both the kind of face card and the suit are new information)
R2: //the KING of spades// (only the kind of face card is new information)
R3 : //the king of SPADES// (only the suit is new information)
(Brazil, 1997 pp.22-3)
key and termination
ピッチレベルに関するシステムがkeyとterminationである。ターンテイキングや話者間におけるピッチの相対的な高さのことである(high, mid, lowがある)。
tone system
ピッチの相対的な高さではなく,動きについて,上昇・下降・下降上昇・上昇下降・平坦の動きが音調核において見られること。発話の情報構造や文脈上の社会的価値を示す。下降系(下降,上昇下降)は,話者の想定として聞き手にとって新情報を提示しており,上昇系(上昇,下降上昇)は,聞き手にとって旧・共有情報を提示している 。平坦は新情報でも旧情報でもなく,単に言語サンプルを提示しているに過ぎない(ルーチンや無関心などはここからきている)。
pitch sequence and pitch concord
paratoneとも言われる,トーンユニットよりも大きな単位でのピッチの流れのこと。また,異なる話者の間でもピッチレベルの一致が見られることがある。このことをpitch concordと言う。
…とBrazil et al.(1980)やBrazil(1997)のまとめみたいな感じになったなぁ…。もう少し補足や修正など,後日行いたいとは思いますが,とりあえず,これであげておきます。
RPT(Rapid Prosody Transcription)を使った研究ということで,Interspeech 2013という学会に参加した同僚が,以下の発表について紹介してくれました。それを備忘録代わりに簡単に紹介しておきます。
<概要>
Smith, C. & Edmunds, P. (2013). Native English listeners’ perceptions of prosody in L1 and L2 reading. Proceedings of Interspeech 2013, Lyon, France, 235-238, 2013.
英語母語話者と非英語母語話者が発話した音声に対して,英語母語話者がRPTを行ったという発表です。
RPTは,なんかカッコいい感じだけど,要は「聞こえてきた音に対してスクリプトに印をつけるタスク」ということ。phrase boundaryには区切れ線を,prominenceには下線を入れる課題のことです。
聞いた音声資料は,the Rainbow Passageを英語母語話者12人(NS)と非英語母語話者(南米・スペイン語話者; ESL)12人による音読を録音したもの。それらをそれぞれ11人の英語母語話者が聞き,チャンクごと(phrase boundary)に区切れ線を入れ,prominenceに下線を引く課題を実施しました。
phrase boundaryについて,どこで境界線を引くかをスコア化して(b-score),聞き手の間の一致度をカッパ係数を用いて検証したところ,NSとESLのいずれも一致度が高かった。つまり,どちらの音声に対しても同じようなところで区切れ線を入れていたということです。ただし,ESLの方がNSに比べ多く区切られていたという点では異なります。
prominenceについては,どこで下線を引くかをスコア化して(p-score),聞き手の間の一致度を同じくカッパ係数を用いて検証したところ,NSとEFLのいずれも一致度は高かった(ただし,著者は一致度の数値に差があることに懸念を示していた)。 頻度を確認すると,NSの方にはESLよりも多くの下線を引いていることが分かった。これは,ESLの方で下線を引くのは聞き手にとって難しかったためではないかと述べていました。
<コメント>
区切りは多いのに,目立ちが少ない,というのがESLの英語の特徴ということになります。今回のESLは南米・スペイン語話者ということですが,そのL1の影響かもしれません。日本人英語学習者であれば,と考えますが,同じようなことにはなるのかもしれません。区切りが多く,ほぼ全ての内容語を強く・高く・長く読んでしまい,どこが目立つのか聞き手にうまく伝わらないということがあるのでは,と思います。この点,検証の可能性がありますね。
また,音読課題で用いたThe Rainbow Passageは,IDEA(International Dialects of English Archive)でも用いられているpassageです。
ちなみに, 私が参加しているプロジェクトでは,「英語母語話者がBuckeye corpusの音声を聞いてRPTを行ったもの(Cole et al., 2010)を,日本人英語学習者が行うとどうなるか」 を扱います。この論文で行ったものとは異なりますが,参考になりました。
ずいぶん前の動画にはなりますが,Peter Roachがdiscourse intonationについて利点と欠点の両面から話をされた部分です。
ふと思い出して再度見てみました。
動画であげられていたdiscourse intonationの利点と欠点は次の通り。
<利点>
1)談話分析との関連
2)双方向のやりとりを観察
3)教育的利用が容易
4)他の英語アクセントへの適用が容易 (pとrというラベルを適用することが,という意味で,「上昇が…という意味」を適用するのではないということ)
<欠点>
1)他のイントネーション要素を捨象している
2)他の韻律要素を捨象している
3)他の英語アクセントについての研究がない
4)記述がややこしい(とは言え,動画の中ではTOBIよりはいいのでは,みたいな話をしていたけど)
欠点の1)と2)は深刻なのだけど,その辺をどう補うことができるか,といったところを考えつつ,教育的な活用ができるのではないかなぁというのがずーっと考えていることなんですが,どうしたもんかとまだまだ悩んでいます。
でも,David Brazilのdiscourse intonationは卒論からのおつきあいで,初心にかえることも必要だな,と。
12月18日(日)に龍谷大学・大阪梅田キャンパスにて開催された,関西英語教育学会KELES第24回セミナー(大阪・兵庫地区)にて,「実践!英語のリズム・イントネーションの指導」と題してお話をする機会を得ました。
門田先生と里井先生にはさまれての緊張の体験でございました…。
使用スライドを公開しておきます。ご質問・コメント等ございましたら,よろしくお願いします。