こんなん出ました

この度、「プロソディを重視した英語音声指導入門:指導の枠組と教科書の活用法」という書籍を溪水社さんから出版しました。これまでも共同で研究を進めてきた磯田先生との共著です。POD(Print On Demand)ですので、書店などでぱらぱらめくりながらながめることができないのですが、もしよろしければ、どうぞよろしくお願いいたします。

 

【研究メモ】関西英語教育学会(2019年度)第24回研究大会WS

久しぶりの書き込みということで,ご報告。関西英語教育学会(2019年度)第24回研究大会にてにて,「英語プロソディ指導のミニマムエッセンシャルズ」と題するワークショップを行いました。

発表スライドを以下に置いておきます。もしよろしければご覧ください。

これまでにお話してきた内容と重複はするのですが,このワークショップでは,小中高大の先生方が多いので,「教材研究」に焦点を当ててお話をしようと試みました。ですので,プロソディの活動やタスクは実際どういうものがあるのか,というお話はあまりできませんでした。その点は配布資料の活動一覧などをご確認いただければありがたいです。

【研究メモ】The 3rd Pronunciation Symposium 口頭発表

The 3rd Pronunciation Symposium (@The University of Wollongong)にて,磯田先生@立命館大と “Demystifying English Prosody: A Pedagogical Framework for Integrated Instruction”と題する口頭発表を行いました。私たちの提案するプロソディ指導の枠組みの紹介と,その理論的背景について概説する,という発表を行いました。

会場であるオーストラリアを始めアジア圏などの教育関係者,大学教員が参加していました。実践の上での関心も得られた模様で,試してみようかなという声もありましたので良かったです。シンポジウムのテーマが “Making Pronunciation Accessible” でしたので,私たちの枠組みがaccessibleへの一助になっていればと思います。

その他にも,1日の発音関係の発表を聞き,質疑などを通じて研究者間の交流を図ることができたこと,また翌日からのALAA2018にも参加し,発表を聞くことができたのは良かったです。

【研究メモ】53rd RELC International Conference口頭発表

53rd RELC International Conference (@SEAMEO Regional Language Centre )にて,磯田先生@立命館大と “Teaching English prosody to Japanese learners: “Three principles” approach to prosody instruction”と題する口頭発表を行いました。

発表スライドを以下に置いておきます。もしよろしければご覧ください。

比較的実践系が好まれると聞いていた学会でしたので,私たちが行っているプロソディ指導を実践に取り入れてもらえると嬉しいと思い発表しました。が,残念ながら聴衆が少なく,私たちの思いは通じなかったのかもしれません。

しかしながら,少ないながらも質問やコメントはいくつかもらえました。また,実践系の学会において,もう少しaccessibleなタイトル・アブストラクトにすべきだったと反省しています。

しかしながらのもう一つとしては,個人的ではありますが,少ない聴衆の中に,Goh先生がいらっしゃったのは嬉しかったです。20年ほど前に,院生だった私は,先生の論文を読み,思いきってメールを送って,自分の論文や考えていることなどをぶつけたことがありました。丁寧に対応して下さり,何度かメールでやり取りをしました。それ以降,顔を合わせたことはなかったのですが,今回,先生はkeynote speakerでいらしていて,プログラムに私の名前があり覚えがあって来たんだと言ってくれて,今回初めて双方顔を合わせたことになりました。

(先生はそのまま国際的に活躍されていて,お前は今まで何をしていたんだ・しているんだと言われればそれまでなのだけど…)

【研究メモ】 The Applied Linguistics Conference (ALANZ/ALAA/ALTAANZ) 口頭発表

The Applied Linguistics Conference (ALANZ/ALAA/ALTAANZ)(@Auckland University of Technology)にて,磯田先生@立命館大と “Introducing prosody instruction into Japanese secondary school classroom: A classroom‐based research”と題する口頭発表を行いました。

発表スライドを以下に置いておきます。もしよろしければご覧ください。

久しぶりの英語での発表と二人での発表もあり,少し時間を超過してしまい,質疑の時間が十分とれず,残念でした。それでも発表後に何人かの方に質問や助言をいただけたのは嬉しかったです。また,プロソディを指導することの意義を改めて感じることができたのはこの学会参加と発表の成果でした。

20年前(!)に留学していた地に再び立つことができたのも,本当に嬉しかったことの一つです。当時お世話になった先生に今回もお世話になりましたし,寮時代の友人と会えたことも良かったです。

【研究メモ】北海学園大学英語教育研究会第4回研究会セミナー

北海学園英語教育研究会主催の「北海学園大学英語教育研究会第4回研究会」にて,特別セミナー「もっと授業にプロソディ指導を!」を行いました。

前半は,私が担当して,提案する原則の基盤と言えるところを説明しました。後半は,共同研究者の磯田先生が,その提案を用いて授業実践に活かすにはどうすればよいかについてお話しました。

教員の方々,教員志望の方々に聞いていただき,タイトル通り授業でもっとプロソディ指導が取り入れられることを願っております。

発表時のスライドと配布資料を以下に置いておきます。よろしければご覧下さい。

個人的には,北海道はまだ2回目で,ろくに観光もしていないのですが,とにかく食べ物が美味しいので,2回とも充実した札幌滞在となりました。

【研究メモ】JASELE熊本での発表(8月22日・23日)

第41回全国英語教育学会熊本研究大会(8月22日・23日@熊本学園大学)にて,「核配置を重視したプロソディ指導—教科書本文を活用した指導法の提案—」と題した共同研究の発表を行いました(共同研究者は磯田貴道先生@立命館大)。

発表時のスライドを以下に置いておきます。よろしければご覧ください。

また,もう一件,広島大学の山内優佳先生@広島大学との共同研究の発表「英語の音声単語認知における誤りの分析」も行いました。

【研究メモ】Murphy (2014)

Murphy, J. M. (2014). Intelligible, comprehensible, non-native models in ESL/EFL pronunciation teaching. System, 42, 258-269.

こちらの概要を。他所にちぎっては投げしたものをつなげておきます。

この論文は,non-nativeの英語についてもモデルとして扱えるのではないか?とのことから,映画俳優のハビエルバルデムの出演したインタビュー番組を視聴を34人の教育関係者(全員いわゆるNS)に依頼,質問紙調査を行ったものです。

質問紙には,明瞭性・理解性・アクセントの度合いなどを5段階のリカートで尋ねるもの(Derwing & Munro 1995らへんのがベース)に加え,表情,ペース,更には語末についてや分節音の誤りなどについても尋ねる項目もありました。教育関係者に尋ねていることもあり、thought group,tone,intonation,prominenceなどの音声学用語なども項目には含まれていました。

結果としては,端的に言うと「non-nativeのモデルの一つとしてのバルデムいけるやん」ってとこに落ち着きました。明瞭性や理解性に貢献する要因としては,内容やパラ言語的特徴に加え,thought groupが確立していること,プロソディ要素の適切な使用,ペースなどが挙げられました。対照強勢や語末が不明瞭であること,分節音の誤りなどが,バルデムの発話をnon-nativeたらしめているとの回答を得た,と報告しています。

今後の課題としては、こういう事例を積み重ねていったらいいんでないの,とか,今回はNSが聞いたけどnon-NSが聞くパターンもいるよね,あたりとなりました。モデルとなりえるもの、として、サッカー選手のアンリや日本からは渡辺謙が参考情報としてあげられていました。

読んでみての問題点としては、質問項目に目がいきました。明瞭性や理解性,訛りの項目は,Derwing & Munro らのものを参考にしているとは言え,”I understood everything Bardem had to say.” に対してagree/disagree で明瞭性を尋ねてたりと,この辺まだまだ課題は多そう。

明瞭性・理解性といった概念が恣意的に記述されているというか、共通理解を得た上で、構成概念化されていないな、という印象です。これについては拙論でもまだ検討が必要であると述べているのですが、現在もそうなのかと認識を新たにしました。

それにしても、論文でハビエルバルデムの名前が出て、しかも、その音声を評定するという課題が出てくるとは…。それこそ、追試で、渡辺謙や本田選手(入団会見してましたね)の英語について調査を行うこともできますね…。

【研究メモ】JALT2013での発表(10月28日)

ずいぶん前になりますが,JALT Kobeにて “Pereption of prosodic cues by Japanese EFL learners” と題した共同研究の発表を行いました。

発表時のスライドを以下に置いておきます。よろしければ覧ください。

【研究メモ】discourse intonation

応用言語学辞典のエントリーからdiscourse intonationの項目をピックアップ。

Pickering, L. (2013). Suprasegmentals :Discourse intonation. In C. A. Chapelle(Ed.), The encyclopedia of applied linguistics (pp. 5437-5443), West Sussex: Wiley-Blackwell.

“discourse intonation” は現在2つのものを指すことが多い。1)談話の区切れなどを示す機能,2)話者間の情報の共有に基づいたピッチ変化を体系化したDavid Brazilによる談話の機能,の2つ。

Brazilのモデルはイギリスやアジア圏では広まったが,アメリカではそれほど影響力を持たなかった。native varietiesのみならずWorld EnglishesやL2 varietiesにもこのモデルを用いられている。Hallidayのモデルとは異なり,Brazilのモデルでは,イントネーションの選択に語用論的機能を付与するモデルを構築した。このモデルではイントネーションの構成要素が対話における情報・社会的な収束に直接的に貢献し,語用論的意図が共有される。アメリカ英語でのPierrehumbert and Hirschberg(1990)のモデルと同じく,全体としてのイントネーション曲線の形よりもむしろ曲線の特定の構成要素により意味が伝達されるもの,と言ってよい。

tone unit and tonic segment
トーンユニットという発話の区切りの中に,ピッチが大きく変化する卓立(prominent・あるいは強勢音節)がある。卓立は情報構造的には新情報である。
Q: What card did you play?
R1: //the KING of SPADES// (both the kind of face card and the suit are new information)
R2: //the KING of spades// (only the kind of face card is new information)
R3 : //the king of SPADES// (only the suit is new information)
(Brazil, 1997 pp.22-3)

key and termination
ピッチレベルに関するシステムがkeyとterminationである。ターンテイキングや話者間におけるピッチの相対的な高さのことである(high, mid, lowがある)。

tone system
ピッチの相対的な高さではなく,動きについて,上昇・下降・下降上昇・上昇下降・平坦の動きが音調核において見られること。発話の情報構造や文脈上の社会的価値を示す。下降系(下降,上昇下降)は,話者の想定として聞き手にとって新情報を提示しており,上昇系(上昇,下降上昇)は,聞き手にとって旧・共有情報を提示している 。平坦は新情報でも旧情報でもなく,単に言語サンプルを提示しているに過ぎない(ルーチンや無関心などはここからきている)。

pitch sequence and pitch concord
paratoneとも言われる,トーンユニットよりも大きな単位でのピッチの流れのこと。また,異なる話者の間でもピッチレベルの一致が見られることがある。このことをpitch concordと言う。

…とBrazil et al.(1980)やBrazil(1997)のまとめみたいな感じになったなぁ…。もう少し補足や修正など,後日行いたいとは思いますが,とりあえず,これであげておきます。